「魔法騎士団の皆はね……すごくいい顔で笑うんだ! リュアン様が朝日も出ない内から動き出して、ろくに休みも取らないで一日中国中を走り回ってるのに……どれだけ疲れてても、皆に今日はありがとうって欠かさず言ってくれるから……。誰よりも苦労してる人が……一緒に頑張ろうって背中を支えてくれるから! いくらそんな風に馬鹿にしたって効くもんか! 絶対に……間違ってるのはあんたたちの方なんだから!」
「……こっちが黙ってりゃあ、つけ上がりやがって……!!」

 セシリーの言葉にあからさまにいきり立ったのはあの軽薄な男だった。
 彼は、獰猛(どうもう)な表情を浮かべ目を血走らせると、頭目の男に告げた。

「ねぇ頭……さすがにこりゃ腹の虫がおさまりやせんぜ。ちょいとシメてやっても構わんでしょ? 言われっぱなしじゃ、俺ら悪党の沽券ってやつに関わりやすぜ?」
「……あまり派手に傷つけるなよ」

 それを聞いた頭目は、ひとつ舌打ちした後鍵を開けた。軽薄な男は腰に()いたナイフを抜きながら、低い格子の扉を潜って舌なめずりする。 薄闇の中、刃物の冷たい銀色が浮かびセシリーの目にちらついた。「ひひ……もう泣いたって許さねえからな。だが、今すぐここで地べたに這いつくばって謝れば、許してやるよ。『私の方が間違いでした』ってな」

 軽薄男はセシリーの元へ恐怖を刻み付けるようゆっくりと歩み寄る。
 ナイフが数度振り回され、風がセシリーの顔を撫でた。