冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「不憫なお嬢ちゃんに一応教えてやろう。俺らは見ての通りならず者さ。依頼主の貴族の坊ちゃんから頼まれてあんたを捕まえ、もうひとりを(おび)きだす餌にした。面倒な奴に喧嘩を売っちまったことを後悔しながら、しばらくそこで大人しくしてるがいい」
「そうなのさ! 馬鹿みたいな仕込みに引っかかってくれてありがとうよ、お嬢ちゃん! あんたらを売りつけりゃ、俺らの懐にゃ大金がしこたま入るって訳だ! 酒も飯も女も買い放題! いいだろ? 楽しそうだろ?」
「そうだそうだ!」「ご協力ありがとうよ!」
「そ、そんな……」

 どっかりと通路の中央に座り込んだ大柄な男の周りを、軽薄な男が楽しそうにクルクル踊り回り、下品な男たちの喝采が起こった。

 少しずつ詳細な記憶がよみがえったセシリーの目から涙が引き、じわじわと心の中に恐怖が広がっていく。
 
(そうだ……私、あの人を手当てしようと)

 街をとぼとぼ歩いていたセシリーは、路地裏で怪我をして呻いていた、あの軽薄の男を助け起こそうと駆け寄り、隠れていた仲間に拘束されて何らかの方法で意識を奪われた。