冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「私が、私じゃ無かったらなぁ……」

 くしっと、セシリーはまだ腫れている瞼をこする。また熱いものが込み上げ、鼻がつまり苦しくなって、息を吸っては吐いても感傷は中々収まってくれない。

「うう……」

 子供みたいにべしょべしょにした顔を手で覆っているうちに、遠くから幾つかの足音が響いてきて、セシリーは慌てて顔を上に上げた。

 誰かが助けに来てくれた……そんな希望めいた考えを一瞬で破ったのは、顔を隠した複数の男たちだ。見るからに薄汚れた怪しい身なりを見て、真っ当では無いことが窺える。

「誰……? あなたたち」
「へへ、お頭。この嬢ちゃん、まだなにが起きたか分かっちゃいねぇみたいですぜ」

 牢屋の隅に向かって後ずさる彼女を、どこか見覚えがある軽薄そうな男が嘲り、後ろから一際大柄な人物が現われてセシリーを見下ろした。