冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 なのにそれだけで、本当に胸が苦しくなったのは、なぜなのだろう。
 別に自分に自信が有って、それを打ち壊されたわけじゃない。元々はそもそも、彼と一緒に踊るなど絶対に嫌と周りに叫んだほどだったのに。

 一緒に生活する中で彼の色んな一面を知った。
 彼はいつも堅苦しく、厳しい素振りを見せながらも、誰かを助けていた。セシリーのことだって、マイルズたちから庇ってくれたし、いつも仲間のことを気にかけ、励ましていた。彼と仲間たちの間には、いつでも温かな絆があった。

 リュアンが自分のことを仲間だと、そう言ってくれた時からセシリーは慢心していたのかも知れない……。

 彼なら嫌そうな素振りをしつつもきっと、当たり前のように今回も受け入れてくれる。きっとふたりでぎこちなく踊って、どっちが下手だの言い合って、キースがリュアンのことを弄るのに乗っかって、ラケルと一緒に笑って……いつもと同じそんな楽しい一時がきっと訪れるんだと信じ込んでしまっていた。

 でも、そうはならなかった。自分では駄目なんだとはっきり言われた瞬間、これまで感じたことのない寂しさが心を埋め尽くし、溢れようとしたものをこらえきれなかった。素敵な人たちの近くにいすぎたせいで、きっと勘違いしてしまったのだ。こんな自分にもちょっとくらいは誰かに認めてもらえる価値があるんだって。