「どうもこうも、娘が家に帰ってきていない……! 聞けばあなたがぞんざいな扱いをして、娘を泣かして帰したというじゃありませんか!」
「ば、馬鹿な!? 帰っていないって、ほ、本部に残っていたりは!?」
「どこにもいないのよ……。皆で確認したから間違いないわ。どうしようリュアン、あの子、誰かに連れてかれてたり」

 涙声のロージーに何も答えることができずリュアンは唇を噛み、彼に詰め寄ったオーギュストが怒りを叩きつける。

「娘に何かあれば、絶対にあなたを許しませんよ――!」
「っ……そんなことわかってます! どいてくれっ!!」

 言葉の途中でリュアンはオーギュストを突き飛ばすと、部屋の背面にある窓を開け放って夜風に身を躍らせた。同時に指で描いた魔法陣から魔法が起動され、彼の身を軽くして着地の衝撃を和らげる。

 そのまま捜しに走り出したリュアンを窓に駆け寄ったロージーが唖然としながら見下した。

「あいつ……自分の立場わかってんの!? リュアンのおバカ――!」
「行ってしまいましたか……」