リュアンは言葉を聞くまいと後ろを向こうとしたが、キースはそれをさせなかった。彼の肩をしっかり掴み、普段秀麗な顔を渾身(こんしん)の想いで歪めると……キースはリュアンの頬を強く張った。

「いい加減にしなさい……! そのままずっと目を逸らし、仮初の強さで自分を鎧ったまま、傷に背を向けて生きていくつもりなんですか! 別にあなたに女性を愛せるようになれなどと言うつもりはない。しかし、弱さからずっと逃げていては駄目だ! 手を差し伸べてくれている人がいるなら……それから目を背けるな!」

 そして彼の胸倉をつかむと、きつい眼差しで射すくめる。

「あなたが本当にセシリーさんを嫌っているのなら……もう私はなにも言いません。でも、そうではないんでしょう? これだけ経っても痛みから向き合うことをせず、逃げるために彼女の手を拒んだと言うなら……! 弱いままでいようとするあなたを、私はもう団長とは認められない。それでいいんですね……?」

 リュアンは拳を握り締めたが何の声を上げず、秒を追うごとに沈黙は重くかさなってゆく。それが十を数えたところでキースは彼を掴んでいた手を緩め、冷たい声で言った。

「……失望しましたよ、あなたには」