どんな会話をしていたのか、恥ずかしそうに肩を縮めたラケルを放って、ジョンはセシリーに向き直った。

「セシリー殿。今後ともこやつをよろしく頼みますぞ。悪いやつではないことは、師である私が保証しますのでな。どうか、これからも支えてやってほしい」

 彼からにこやかに手を差し出され、セシリーも笑顔でそれに合わせる。

「ええ、喜んで。よかったらまた今度彼の、お弟子さん時代の話を聞かせてもらえますか?」
「セシリー!?」
「はっはっは、面白い話はいくらでもあるぞ。あのリルルと共に、私がどれだけ手を掛けさせられたことか。何なら今からでも……」
「お師匠様、怒りますよ! セシリー、帰ろう! 何を話すのか知らないけど、絶対ろくな話じゃないから!」
「ええ~? 聞きたいのに……」

 やっぱり師匠の前ではまだまだ子供らしく、怒って眉を吊り上げたラケルは、セシリーの手を取って部屋から抜け出す。ジョンはそれを見て含み笑いを漏らしながら、「必ずまた来るように!」と言って大きく手を振ってくれて、こんな楽しいお師匠様が自分にもいたらよかったのにと、セシリーはちょっとだけラケルが羨ましくなった。