「どうもそんな感じではない気がしましたけどね。御嬢様を嫌ってらっしゃるのなら、私ともあまり話したがらなかったでしょうし。直接なにか言われたのですか?」
「なんていうか……あんまり何も言ってくれないから不安なのよ。男性って言うか、男の子って感じなのよねぇ」

 やれやれと、まるで小さな子供を心配するようなセシリーの言い草にエイラはくすりと微笑んだ。

「それは気にしても仕方のないことですわよ。人の心なんて、外から見たっても分かりませんもの。御嬢様が彼に対して含むことがなければ、普通に接して……困ってらっしゃるならそれとなく手を差し伸べて差し上げるのがいいと思います。それでも嫌われるようなら、それはそれで仕方のないこと……うまく距離を保つしかないかと」
「そうよね。疲れてるんだったら、今度肩くらい揉んであげようかな? ところで、エイラはどうして治療院なんかに?」
「いえ、大したことは無いのですが……最近時々胸が痛みますの」
「ええっ!? だ、大丈夫なの? ちゃんと休んでる!?」
「もちろんですわ。治療師の方にも体の方に問題は無さそうだと言われましたし。ただ……お嬢様、最近私の様子を変に感じることはございませんか?」

 エイラは、珍しく眉根を寄せ、ぼんやりと言った。いつも穏やかな彼女の表情からは困惑が読み取れる。