セシリーが手のひらをぎゅっと握ると、ラケルは再び自然な顔で微笑んでくれた。

「そう……だよね。ありがとうセシリー」
「いいんだよ。あのふたりだって悩んで苦しんで、失って……お互いの手を借りて立ち上がったって言ってた。なんでも相談してよ、そのための仲間じゃない? 私もラケルの役に立てたら嬉しいし!」 
「そう……だよね。ここはそのための場所だった。誰かと、肩を支え合うための……」
「あっ」

 急にセシリーはあたふたし始めた。気づけば食堂の時計は、昼休憩の終わりを示している。

「も、もうこんな時間!? 私ロージーさんに頼まれて、お昼から受付係しなきゃならないの!」
「それじゃ片付けは僕がしておくよ。ご馳走になったしね」
「ほ、本当!? ごめん、それじゃお言葉に甘えちゃう! またね、ラケル! わわっ……」
「気を付けて!」

 食堂の椅子に引っかかってこけそうになりながらセシリーは走っていく。

(僕にしかできないこと、か……)

 ラケルはそんな彼女を見送った後呟くと、握られた手をしばらくの間嬉しそうに見つめていた。