「あはは……出来る限りは。でも僕も早く団長に追いつけるよう頑張らなきゃ。団長とキース先輩は本当に凄くて……並の騎士が百人いたって倒せっこないような魔物を、ひとりでやっつけちゃうんだよ。どうしたら、何を思ってあの人たちは、あんなになるまで……いや、今も――」

 努力を続けていられるんだろう……続いた彼の言葉は力なく弱々しいもので、表情にも(かげ)りが見える。憧れの人と間近に接したことで、よりはっきりと自分との差を感じ、自信を失っているのかもしれない。

「……大丈夫だよ」
「セシリー……?」

 セシリーは彼の手をそっと握った。そこには、目標に近づこうと必死に訓練した証が見えたから。

「だって、見たらわかるくらい、こんなしっかりした手になるまで努力したんだから。それにラケルにはいいところ、一杯あるよ? いつも元気で明るいし、困ってる人を放っておかないくらい優しいし。団長とかみたいに強くなれるかはわかんない。でも、このまま進めばきっといつか、ラケルにしかできないことちゃんと見つかるよ」