――ちなみにジョンは、リルルのことを初めて見せた時、ラケル自身と出会ったときよりも驚いていた。

 彼いわく……リルルは魔物でも普通の動物でもなく、もしかするとどこか特別な地域や人を守っていた精霊なのではないかという。稀ではあるが、長い時間をかけて大地や物に自然とたまった魔力には自我が芽生えることがあり、それが周りにいた生き物の形を真似て、意思を持って行動するようになると、精霊と区分されるのだそうだ。彼らは高い知性を持ち、自らが攻撃されなければ、襲ってくることは無いらしい。

「通常、精霊は自分が生まれた土地をあまり離れたがらないものなのだが、リルルはその中でも特殊な個体なのかもしれんな」

 師匠がリルルの頭を撫でて言ったが、ラケルにとってはリルルが誰かに害を及ぼすようなものではないと分かっただけで満足で、何者であるかはどうでもよかった。共に暮らすうちに、すっかり兄弟のようになっていたのだ。