ルース一家の話し合いは大きく紛糾した。なにせ両親からすれば貴重な働き手が一人減ってしまうし、兄弟たちだって王都で暮らせるラケルが羨ましくてたまらない。皆から強い反対を受けたものの、村長が両親を強く諭す。

「ルース家の者たちよ、これはお前たちにとってもチャンスでもあるのだ。もしラケルが魔法使いとして大きく名を上げることになれば、貴族から養子に迎えたいという話が来てもおかしくない。それほど強い魔力を持つ者は希少で必要とされておるのだ。立派な魔法使いになった暁には、きっとラケルはお前たちにも何不自由ない暮らしを約束するだろう、そうだな?」

 魔法を学んでみたいラケルは一も二も無く頷く。そしてそう言われると、両親としては大きく気持ちが揺らいだようだ。子供自身の望みでもあり、もしうまく行けば自分たちのこの先の生活も保障され……ついでにまあ、ひとり分の食い扶持も減る。

 結果ラケルは、ずるいずるいと泣き喚く下の兄弟たちを残して両親達に見送られ、晴れて魔法使いの屋敷の門を叩くことになった。