(何をしているんだ……俺は)

 そう思いながらも、俺は彼女のことをじっと目で追ってしまっていた。今日も何やら重そうな荷物を抱えている様子だ。彼女は時々クライスベル商会で販売している便利な商品を持ち込み、思ってもみない方法で魔法騎士団本部内の問題を解決することがあった。今回もきっと、誰かから何か頼まれごとをしているのだろう。

(ふん……まぁ、努力だけは認めてやってもいいが)

 セシリーが騎士団に来て一カ月近くになるが、未だ辛そうにしているところは見たことが無い。てっきり早々に泣き言を言い、諦めて家に帰ると思っていたにも関わらずだ。彼女は毎日朝も遅れずここへ来て、ロージーと一緒に楽しそうに働いている。たまに失敗はするが、そのくらいは仕方がない。

 そして、団員たちの評判もいい。第一に彼女が来てから食事がまともになり、建物も清潔になったし、団員たちの顔も明るくなったように感じる。俺も密かにその点だけは、セシリーが来てくれてよかったと思っているんだ。