「大丈夫、何もありませんよ。これまでと同じように時計塔は時を奏で、我々騎士団は人々を守り続ける……それこそが、それぞれが存在し続ける理由なのですから」

 メイアナを元気づけるその言葉が、少しだけ空々しく感じてしまうのは、セシリーの気のせいだろうか。キースは明るい表情で、その後メイアナにもう一杯の紅茶を注文してくれる。

「それよりもメイアナ、せっかくのお茶が冷めてしまった。すみませんが、温かいものをいただけますか? 彼女にも」
「ええ、御免なさいね、こんな話をして。すぐに淹れて参ります」
 
 その時丁度、午後三時の鐘が鳴って……先日の不幸な出来事とつなげて憂鬱になりかけたセシリーは、さすがに考え過ぎよねと首を振って、改めてキースとの会話を楽しむことにした。