自分の周囲がどうあれ、こうして彼のように苦しむ人々は現実にいくらでも存在する。それをわかっていて私は我が身可愛さでそれらから目を背け……小賢しく諦めも美徳だなどと考え、努力を放棄して楽になろうとしただけではなかったか。

(――本気で、変わろうとしたのか……? 目の前のこの若者のように)

 猛烈に自分が恥ずかしくなり、今まで思考停止していた頭が忙しく働き始める。そして胸に浮かんだのは、これまでとは真逆の覚悟でした。

 私は気づくと彼の肩に手を掛け、こう告げていた。

「リュアン君……いえ、リュアン。君に絶対にあきらめない覚悟があるのなら、私がその望みを実現できる場所を用意します。だから、今まで以上に頑張りなさい! 君には才能がある。それは魔法でも、力でもなく、その在り方だ! 苦しみにも膝を折らず立ち向かうことができた君になら、人々を導く背中を見せることが必ずできる! あなたに続く心ある者たちをここでも探し、育てなさい!」
「キース会長……。でも、こんな弱い俺では、どうすればいいのか」