セシリーの母がすでにいないことに配慮してくれたのだろう、一旦彼は口を噤んだ。気にしていないことを告げると、キースは濃青色の瞳でセシリーを直視し、ひとつ断りを入れる。

「やはり、あなたには団長と私との出会いを話しておきたい。ですが……それを語るには少しばかり我が身の恥も晒さなくてはなりません。長い話になりますが、茶を待つまでの間、少しばかりお付き合いいただけますか?」
「ええ、もちろん! ぜひ聞きたいです!」
「団長には、ここでした話は秘密にしてくださいね? では……お家自慢から始まるようでおこがましいのですが――」

 持ち前の好奇心をうずかせたセシリーに、悪友を見かけたような冗談めかした口調で美貌の騎士キースは……ゆっくりと彼の生い立ちや、リュアンとの出会いについて語ってくれた――。