「すみませんが遠慮しておきます。やっかみに遭いたくないので」
「それは残念」

 彼の隣にいるだけで、すれ違う女性たちの棘のような視線が刺さること刺さること。女性たちの囲いから抜け出る頃には、すっかりセシリーは疲弊しきってしまった。 

「毎日あんな感じなんですか?」
「割とそうですね。人気者の宿命とでも申しましょうか。はっはっは」

 自分で言ってしまう辺りが、この人らしいと思う。セシリーのようなつい最近爵位を得たばかりのにわか貴族とは違い、堂々たる立ち振る舞いには気負いの欠片も無い。

「そういえば、正騎士さんたちにも魔法が使える人たちっていますよね。キースさんはどうしてこちらを選んだんですか?」

 ロージーから聞いた話だが……騎士学校で卒業試験を終えた生徒たちは、本人の希望、または適性が無い場合は自動的に正騎士団の方へと振り分けられる。