まさかこんなところで出くわすとは思わなかったふたりに、セシリーは身体を固くする。

 あんな事があった後なのだ、わざわざ声を掛けてこずとも、そ知らぬふりをして通り過ぎてくれればいいだろうに……悪意が背中に透けて見えそうだ。 

「……御機嫌よう、マイルズと、イルマさんでしたっけ? ご丁寧なご挨拶、ありがとうございます。なにか御用でもおありかしら?」

 内心の苛立ちを抱えつつも、この場にはリュアンもいる。こんなふたりに怒りをぶちまけ、元々開いた彼との溝が底なしの断崖絶壁と化してしまったら、目も当てられない。セシリーは微笑みを浮かべ、努めて丁重に彼らに頭を下げた。

「おや、君のことだ。てっきり怒り狂って突っかかってくると思ったんだが……少しは人間的に成長したのかな? 僕と付き合ったことも無駄にはならなかったようだね」
「よかったわねセシリーさん、マイルズみたいな素敵な男性と付き合う経験ができて。あなた、男運だけはあるんじゃない? どうやらそっちの人もなかなか美形みたいだし。ま、マイルズには負けちゃうんだけどねぇ」