冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 体中を悪寒が走るが、逃げだすには遅すぎた。
 布で口も塞がれ、セシリーは麦袋のように肩へ(かつ)がれる。
 抵抗するにも体をそらすのが精一杯で何もできない。

「このまま今日は倉庫に詰め込んで、明日の朝にゃ船の中だ。家族には二度と会えねえだろうし別れの言葉でも呟いてるといい……ハハハ!」
(こんなの聞いてない! ひどすぎるよ!)

 必死にもがき……セシリーは不運と、そして自分を呪う。

(何でこんな目に遭わないといけないの……?)
 
 誰かに聞くまでもないことだった。きっと不運のせいだけではなく、悪いのは何も持たない自分。苺ジャム女みたいに綺麗なわけでもないし、腕っぷしも強くない。頭だってよくない。特別な物はなんにも作れない。そんな自分が他人の餌にされるだけの、無能で無価値でひ弱な存在なんだって思い知らされ、悲しさばかりが募ってくる。

(悔しい……! どうして今まで、もっと自分でどうにかしなきゃって思わなかったの? 何も持たないまま、どうして幸せに生きていけると勘違いしてたんだろう!)