「いえ、金額面でも色々便宜を図っていただいたようで、こちらの経理方も喜んでおりました。末長いお付き合いをどうかよろしくお願いいたします」

 ふたりの堅い挨拶が終わり、ルバートは商人らしく、時は金なりとばかりに急ぎ彼女に告げる。

「それでセシリー様、本日はどういったご用向きで?」
「ごめんなさいね、大したことじゃないの。お父様に顎で使われたのよ。郵便で頼むより速いからって」

 セシリーがオーギュストから預かった書類を手渡すと、ルバートはやれやれと肩をそびやかす。

「オーギュスト様は相変わらずお忙しい様子で、全国を飛び回っているようですな。たまには本部にも顔を見せて、従業員たちに檄を飛ばしてもらわなければ」
「ルバートさんがいるから安心してるんでしょう。下手に自分が顔を出しても気まずいだけだって言ってたもの」