「訓練を抜け出して来たんですか?」
「まさか、正当な休憩時間ですよ。副騎士団長ともなると肩の凝る仕事も多いものでね」

 彼は軽く肩をすくめてみせる。普段から虚実(ろう)する彼の言動は正否の判別がつかない。よってセシリーはため息ひとつ吐くと、心の中に収めておくことにした。

「そういうことにしておいてあげましょ」
「おや、信じていないのですか? 仕方ないですねぇ、では頑張っているセシリーさんにご褒美(ほうび)を差し上げましょうか。口を開けて?」
「はい? ……あむ」

 その自然な挙動についついセシリーは無防備に口を開き、そこにキースは手ずから何かを放り込む。

「あ、美味し~……」

 舌を包む甘い味はすぐにチョコレートだとわかり、セシリーの顔は思わずほころんだ。