(あ~ぁ、隣の絨毯にまで沁みこんじゃってるじゃない。こんどうちの商会の蒸気式魔法洗浄器を持ってくるか……)

 今さらながらこれをひとりでやっていたことに感服しつつ、セシリーはせめて床だけは綺麗にしようと、二階から階下へ降りていく。

「どこかな~? ここかな? あ、あった! 後はお水だ~」

 暗い用具庫の明かりをつけ、白い雑巾とバケツを見つけた後、水を()もうと台所に入る。すると、そこには先客がいた。

「ああ、お早うございます。セシリー嬢」
「あ~、キースさんだ。もしかして……」

 見るとキースの手は優雅にティーカップを引っかけている。通常であれば、今頃は外を走ったり格闘訓練などに勤しんでいるはずの時間だというのに。

 もしやと思ったセシリーは含み笑いを浮かべ、口元に手を添え声を潜める。