派手よりな今の流行とは違うかもしれないけど、古典的で精緻(せいち)な紋様を描くレースで出来たヴェールときらめく宝石が控えめに飾られたドレスは素敵。

 私の好みや体の線にも、ピッタリだった。

 嫌な顔せずに長時間試着に付き合ってくれていたシリルは、ついに気に入るものが見つかったかとパッと顔を輝かせた。

「フィオナ。とっても可愛いよ。天使に仲間と間違えられて連れ帰ってしまわれないかは、心配だけど。これが気に入ったの? わかった。マダム。これを基にデザインしたものを、注文しようと思うんだけど……」

 すぐ近くにいた責任者のマダムは、私たちの希望を書くためのメモを持って頷いた。

「かしこまりました。こちらだと……そうですね。奥様に合うデザインをお出ししてから、十月ほどお時間を頂きます」

 結婚適齢期の貴族は、お互いに気に入って家同士の条件が合って婚約すれば、公示して一年ほどで結婚することになる。

 だから、結婚式用の高価で豪華なドレスとなると、そのくらいの長い制作期間が必要になるのだ。

「……十月」