【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。【コミカライズ】

 あの始まりの日から、ちょっとしたお酒の場での冗談の責任を取って「本当に大丈夫なのか」と私のことを気にかけて、時間を作っては何度も様子を見に来てくれた。

 もし辛かったら俺と一緒に逃げようとまで言ってくれて、夫のシリルへ勇気を出すきっかけを作り、背中を押してくれた。

 そんなルーンさんを犠牲にすることは、私には出来ない。

「ルーンさん。大丈夫だから……気にしないで。これは……はじめから、私の問題なのよ」

「フィオナ……くそっ」

 彼の言っていた通り。ジャスティナと私が居たとして、全員が彼女を選ぶなんてありえない。だから、周囲から見ればきっとおかしな部分が多かったと思う。

 けれど、あの時の私は「なんでどうして」と、むくわれない我が身を嘆くばかり。

 自分の今いる状況をもっと冷静に判断して、エミリオ・ヴェルデのたくらみに自ら気がつき、お父様に報告するなりすれば、この事態を防ぐことが出来た。感情的になり過ぎて、失敗してしまった。

 もう二度と繰り返さない。

 私が向けたまっすぐな視線が気に入らなかったのか、エミリオ・ヴェルデは不満そうに鼻を鳴らした。