やっぱり……ルーンさんが、行方不明になってる?

 けど、あの人は勇者ご一行にも選ばれた魔法使いで……それって、世界でも一番強い魔法使いという証拠で……そんな彼が危険な状況は、想像がつかない。

「いいえ。私はお礼のお菓子を作るからと言ったら、翌日は、王の命令でベアトリス様に会うからと……お菓子は包んでおいてくれたら夜に取りに来るって、そう言ってたんですが、ルーンさんは来ませんでした」

 お菓子は毎日作り直していたんだけど、やっぱりルーンさんは来ない。私があの日ルーンさんと話した内容を教えると、シリルは難しい表情になった。

 普通に考えればベアトリス様は旅の仲間の一人ルーンさんを何かしても、何の意味もないはずだ。

 彼女はルーンさんについては、自分の好みではないと公言しているらしいし……それもよく考えたら失礼な話だけど、ベアトリス様に好意を抱かれるのは天災に近いので、好まれない方が運が良いのかも知れない。

 でも、本来の目的を達成するのに必要な私やシリルには、手を出してはいけないと王に厳命されていると聞くけど……まさか。