イングリッシュガーデンから抜け出した王子様モデルのような人が私の方へ来た時には驚いたけれど、姉と会った沖田様なら私のことを‘小野田’だとわかっても不思議でない。

ここは大好きな場所で何時間いても飽きないので時間はかまわない。

スコーンをいただきながら聞こえてくる話を聞いて、だんだんとその内容を理解すると…どうしよう…お姉ちゃんの嘘を肯定する方がいいのかな?と頭の中で考える。

「…そう耳にしたお嬢さんとお会いしたかった。お姉さんは‘私です’と終始おっしゃったけれど、どうも耳にした雰囲気と実際にお会いしたお姉さんの雰囲気は異なるし、お母様の様子もおかしかった。私が会いたかったのは鈴さんだったのでは?」

ちょっと待って…沖田様の話は工場勤務だから完全に私のことを指している…でもお姉ちゃんは‘自分だ’と言った…私は今お姉ちゃんを肯定することは出来る。母も否定しなかったことを私が否定するより肯定すること…それが楽な気がするけれど…嘘に嘘を重ねることは沖田財閥を相手にとても大きな問題になるのではないだろうか…

「とても悩んでいるようだけれど、確認不足の責任は俺にある。特に嘘を責めるつもりはない」

一人称を‘俺’に変えた沖田様は、私の手にある、あと一口のスコーンにクロテッドクリームを乗せて

「俺の分あげるから、教えて」

そう穏やかに微笑んだ。

「申し訳ございません、沖田様。姉も悪気があったわけでなく言い出しづらかっただけだと思うんですが…工場勤務も一人暮らしも…はい、私です」