ドクン……ッ

あまりに優しく微笑むから…
わたしは石みたいに固まってしまった。

「う、うん…っ!」

どこからともなく教室に入ってきた春風が
わたし達の間を通り過ぎたその瞬間。

今まさに…わたしの視界の中では
松村くんがドアップに描かれていた。


現実での‪”‬キュン‪”‬は
もうとっくの昔に諦めていたわたし。

少女漫画の中で繰り広げられる
数々のありえないような展開……。

もちろんいっぱいあこがれたりはするけれど、
現実にその‪”‬あこがれ‪”‬を期待したりはしない。

‪”‬キュン‪” は少女漫画だけで十分。

そう思って……いた。

こんな…っ、茶ノ宮くんにそっくりな
男の子に出会うまでは…!