旅が始まろうとしている。
 ドラモンド侯爵は、わざわざ門前まで見送りをしてくれた。

 今回、シナモン以外全員が平等にと国家騎士団の制服を着ている。
 制服を着るだけで、身の安全を守ることが出来るから有難いものだ。
 白のユニフォームではない鈴様とホムラさんを見ると不思議な気持ちになる。
 鈴様の制服は新品同様だけれど、ホムラさんの制服はややくたびれている。

 鈴様は相変わらずドラモンド侯爵を見て、デレデレしているが。
 荷物を何も持っていなかったので、
「あの、荷物は?」
 と訊いてしまった。
「必要ない。現地で買えばいいだろ」
 何言ってんだコイツ…という表情で鈴様が私を見てきたので。
 私も何言ってんだコイツ…という表情をしてやった。
 皆、必要最低限の荷物をリュックに積めて背負っている。

 旅行に行くのではないのだ。
 いずれ野宿はするだろうし、欲しくても手に入らない事態だって起こるだろう。
 呆れていると、ホムラさんがやって来て、
「必要なものは私が持っています」
 と、背負っているリュックを指さした。
 ホムラさんは、登山でもするんですか? と突っ込みたくなるくらい大きなリュックを背負っている。
 それを見て、げんなりした。

「鈴がこの旅で成長することを私は心から願ってるよ」
「勿論です、ドラモンド侯爵」
 鈴様は、父上…とは呼ばない。
 上司と部下の関係しか見えないな…と苦笑する。


「行ってきます」