失恋タッグ

まあ···、でもロープウェイくらいなら大丈夫だろう。

私は高所恐怖症だということを伏せたまま、朝比奈くんに着いてロープウェイに乗り込んだ。

ロープウェイは6人ほどの乗り合いになっていて、私達は一番後列に座った。

休日の今日は、ほぼ席は満員。

そしてロープウェイはゆっくりと山頂に向けて発車した。


大丈夫···。下さえ見なければあっという間に着くわ。


ロープウェイはぐんぐんと山頂に向けて登っていく。


「先輩っ、あれって富士山じゃないですか?」


朝比奈くんが遠くを指さしながら言う。

そう言えば、先程貰ったパンフレットに天気が良ければ富士山も見えると書いてたっけ?

しかし、私はそんな景色を楽しむ余裕はない。

朝比奈くんが指差して教えてくれているのを他所に、私は真っ直ぐ前の席のおじさんの若干薄くなった後頭部を見ていた。


もしかしたら、少しくらいなら誤魔化せるかもと思ったのだけど、やはり駄目だ。


ぐんぐんと上昇を続けるロープウェイに、私の鼓動は早くなり、変な冷や汗が流れてくる。

だけど、今更、高所恐怖症だなんて恥ずかしくて言えない…