「折角、先輩が誘ってくれたんですから───。
それに、社内の若手で作ったの遊びの草野球ですから、皆毎回参加してるわけではないです。用事があればそちらを優先してます。
今日も、デートがあるので参加できないと伝えてますし。」

朝比奈くんは「だから、大丈夫です」と
運転しながら笑みを含んだ視線だけこちらに向けた。


「ちょっと…全然大丈夫じゃないわっ。
そもそもデートじゃないんだから。」


「僕はデートだと思って来たのですが…───」


朝比奈くんはおかしいな..というように
首を傾げている。


「デートじゃないわ。これは仕事よっ」


「でも、手当が発生してないわけですから、これはデートではないでしょうか?」


「それは、屁理屈よ。
もしかして、皆に私と二人で出掛けるって言ったの??」

社内の草野球チームなら、変な噂が広まっては困る。
しかも、快斗と別れたばかりで、後輩のしかも朝比奈くんに手を出したとなれば尚更だ。

「本当はあの柚葉嬢とデートだと、喉まで出かかったのですが、グッと堪えましたよ。邪魔されると嫌ですしね───。」

信号待ちをしながら、朝比奈君は私の目をジッと見つめて言う。


「デートじゃないって言ってるでしょ…」

私はその視線から逃げるように窓の外に反らした。

隣から「ククッ」と朝比奈君の笑う声が耳に届いて、年上をからかってるのだと悟る。

私は話題を反らすように音楽の音量を上げた。