「そういえば、沙苗さ。
倉木リーダーとはどうなったの?」


すると、急に浜名さんが話題を変え、出てきた快斗の名前に私の胸がドキッと飛び跳ねた。


「ああ、倉木リーダーね···──。
思ったより簡単に落ちちゃったから、つまんなかったなぁー。」


「でも、倉木リーダー、企画部の次期部長候補だよ!! 
部長クラスに昇格すれば、夏のボーナスだけでも100万余裕でこえるって噂だし。」



「まあね…。私、働くの嫌いだし。その為に大手企業に頑張って就職したんだもん。
早く結婚して専業主婦になりたい。」


沙苗ちゃんが快斗を誘惑したのは、快斗の将来出世することを見据えてのことだった。

快斗が好きな訳でもなく、お金目当てに他ならない。

沙苗ちゃんにも勿論腹が立つが、簡単に沙苗ちゃんの色仕掛けに落ちた快斗の不甲斐なさにも腹がたつ。


「ははっ。同感。でも、ブランド物好きの沙苗を妻に持ったら夫は大変だろうね。」



「いいのよ。年下の可愛い奥さんにおねだりされたら男なんてそれだけで嬉しいんだから」


「でも、倉木リーダーって···
秋月さんとはもう別れてんの?」


「····フフッ··多分、昨日別れ告げられたっぽい。だって、今朝、目の周り腫れて酷い顔で来てたもん。」



「でも、やばくない。同じ部署の先輩の彼氏に手を出したの本人に知られたら…。」


「別にどうでもいいわよ。
どうせ、耐え切れなくなって他の部署に異動するだろうし。
  
そもそも、私あの人嫌いだし…」


私は沙苗ちゃんの言葉に、思わずギュッと両手を固く握った。