最悪だ···──。

しかも、二人は歯磨きや化粧直しをし始めてしまったのですぐには出ていかないだろう。

私は出るタイミングを完全に逃してしまった。

「ああ、まじでだるい。
今日会議で人いないから電話対応面倒なのよね」

いつもより、声のトーンは低いがその声は間違いなく沙苗ちゃんの声だった。
いつもと違う声色に、普段の可愛らしい声は作ったものだと察する。

「分かるっ。うちの部も朝から大変だもん」

もう一人はうちの隣の部署でデザイン部の浜名さんだ。
沙苗ちゃんの同期で二人は仲が良い。



「取らないとうちのお(つぼね)連中がうるさいのよね」


沙苗ちゃんの小馬鹿にした声色に私のこめかみがピクリと反応した。

お局連中というのは、きっと私たちのことだろう。


沙苗ちゃんの言葉に浜名さんと二人で大爆笑している。

笑えないのは、トイレに籠もってる私だけだ。

新入社員は仕事を覚えないといけないので、電話を率先して取るのは仕方のないことだ。

大変なのは分かるけど、私自身、そうして仕事を覚えてきたのだ。