倒れたビール瓶から残っていたビールが溢れ出し、テーブルの上を濡らした。

「ああー--!!お前、何やってんだよ」

篤紀は大袈裟に叫びながら、おしぼりで零れたビールを拭いている。

「篤紀、悪い···───。片付け頼む。」

僕はそう言って、ぶつくさと文句を言う篤紀を無視して、秋月先輩の席へと向かった。

こんな祝いの席で、有森が倉田リーダーとの関係を告白するなんてことはないだろうが、あまり秋月先輩に近づけたくなかった。

しかし、僕が割り込む前に有森は
トイレから戻ってきた常務を見つけて、ビール瓶を手にそちらに走って行った。

僕はホッと息を着いたが、ここまで来たら引き返すわけにも行かない。

「秋月先輩っ」

僕の声に秋月先輩は振り返った。


そして、僕だと認識すると驚いたようにヘーゼル色の瞳を大きくさせた。

最近、先輩を避けていたから、酒の席で僕から話しかけられるなんて思ってもみなかったのだろう···。



「ちょっと話したいことがあるのですが···───」



僕の言葉に秋月先輩は一瞬、戸惑いの表情を滲ませた。


「うん。話って何かな?」


しかし、すぐにいつも通りの隙のない綺麗な笑みを返してくる。