失恋タッグ

「おい。朝比奈、聞いてるのか?」

俺の視界にいきなり篤紀の顔がにゅうっと入ってきて、僕は顔を横にそむけた。

「聞いてるよ。ゲームの話だろ?」

篤紀の話と言えば、ゲームの話か女の子の話のどちらかだろう。

秋月先輩に気を取られていた僕は当てずっぽうで答えた。

「違うよッ。先週の合コンで出会った子の話だよ。」

あ、女の子のほうか...。

篤紀は「やっぱり聞いてないじゃねえか」と、口を尖らせて不貞腐れている。

「聞いてる。聞いてる。」

僕は適当に取り繕いながら、目の前の刺身を箸で取ると、口に放り込んだ。

そして、再び秋月先輩へ目を移すと、そこに
有森がビール瓶を手に秋月先輩にお酌をしている姿が目に飛び込んできて
僕は思わず勢いよく立ち上がった。

その拍子に体がテーブルにガタッと当たり、
近くに置いていたビール瓶が倒れた。