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「朝比奈くん、ごめん···───。
私、やっぱり朝比奈君とは付き合えない。告白したことはなかったことにしてくれる?」
数日後、有森に階段の踊り場に呼び出された僕は、有森にそう告げられた。
記憶を辿って、そういえば告白の答えを保留にしてもらっていたことを思い出す。
「別に謝らなくても···───
そもそも、付き合ってたわけではないし···」
逆に振る手間が省けて良かったのかもしれない。こちらから振ったりすると後々仕事がやりにくくなる。
「実は好きな人ができて···その人と付き合うことになりそうなの」
有森は聞いてもいないのに、ベラベラと喋り出す。
自分から喋るということは、聞いてほしいのだろうけど、僕は興味がない。
「そう···──それは良かった」
僕は簡単に相槌を打つ。
「じゃあ、お昼時間なくなるから」
僕は無理矢理話を終わらせると有森に背を向け、エレベーターへと向う。
「あッ、倉木リーダー♪♪」
その時、有森の声が廊下に響いた。
その名前に僕は思わず足を止めて後ろを振り返る。



