失恋タッグ

それから、先輩のお陰で気持ちを切り替えることができた僕は、ヒットこそならなかったが、商品化までこじつけることができたのだ。

叔父からは1年目にしては、上出来だと言われたが、ヒット商品を狙っていた僕は、当然納得はしない···───。



「秋月先輩ッ」



仕事を終えた僕は廊下で先を歩く秋月先輩を見つけて呼び止めた。


「先輩お疲れさまです。」



「あっ、朝比奈くん、お疲れ様。」



「───···功労賞おめでとうございます」


ずっと、先輩を避けてきたけど、これだけはちゃんと伝えたかった。


いきなり呼び止められた秋月先輩は、一瞬目を丸くさせたが、僕の言葉に嬉しそうに目を細めた。



「ありがとう。
朝比奈くんも商品化おめでとう」



「ありがとうございます。
売上は伸びませんでしたけど···」


折角、先輩からの祝いの言葉にも、結果に満足してない僕は、素直に喜ぶことができない。


「フフッ···初めてで、商品化までこぎつけるなんてなかなかできないのよ?
さすが元営業部のエースだと思ったわ。」


先輩の言葉は···僕の塞ぎ込んだ気持ちを一瞬で浮上させてしまう。


先輩の笑顔につられて、僕の顔も自然と笑顔になる。


「柚葉っ。」


その時、背後から先輩を呼ぶ声が降ってきた。


「快斗───」



「俺も今、終わったから食べて帰ろう。」


「うん。」


先輩は倉木リーダーの言葉に顔をほころばせた。


「朝比奈。お前も今帰りか?」



「はい···───。
でも、机に忘れ物したので戻ります···」


二人とエレベーターを共にしたくなくて、咄嗟に嘘をつく。



「じゃあね、朝比奈くんっ。次も期待してるわよ」


先輩はそう言って倉木リーダーと当たり前のように二人並んで帰っていった。


いずれ秋月先輩は倉木リーダーと結婚して永遠に手の届かない存在になってしまうのだろう。


先輩には幸せになってほしい···。


心からそう願っていたのに···───