「ごめん...でも、ほんの出来ごころだったんだ。彼女とは一度だけなんだよ。」

「一度も二度も変わらないよ...」

これから、同じ部署で沙苗ちゃんを見るたびに思い出すのだ。


「ごめん。でも、もし、柚葉が許してくれるなら..」

快斗はそこまで言って、卑怯にも私に判断をゆだねてきた。


「無理だよ。もう前のようには戻れない..」

まだ、見ず知らずの相手なら違っていたのかもしれない。

しかし、相手は沙苗ちゃんだ。

嫌でも彼女と快斗が触れているところを
想像してしまい、吐き気がする。

目の前の快斗は私の言葉に愕然とした表情を浮かべ佇んでいる。

ショックを受けているのは私の方だ。

被害者面した快斗にムカついてきて、私は涙を手で拭うと口を開いた。

「いいよ。別れよう。さようなら」

そして、私は踵を返すとその場から逃げるように走り去った。