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「先輩…───。
おみくじはただの神社の商売道具にすぎません。
ランダムにくじを引くおみくじなんて当たるわけがないんです。逆に数少ない大凶を引き当てた先輩は引きが強いですよ。」

帰りの車の中───朝比奈君は運転しながら、もっともらしい言葉を並べている。

しかし、そんな言葉も大凶の私には響かない。

「でも……、考えてみれば今年に入って後輩に彼氏を寝取られるし、結婚は破棄になるし、ろくなことがないわ。」


うじうじとぼやく私に、朝比奈君はハンドルを握ったまま、ハアッと息を吐いた。


「もし、私の大凶のせいで商品がヒットしなかったらごめん……」


「大丈夫です。先輩が大凶でも僕は大吉です。
だから、商品は必ずヒットします。
それに、先輩のおみくじにアドバイスが書いてあったじゃないですか。
願い事のところちゃんと読んで見てください」


「願い事……叶いにくい。
救いの手を求めよ···」



「僕が先輩に救いの手を差し伸べます」



私が朝比奈くんの方へ視線を向けると、朝比奈くんはニコリと優しく微笑んだ。


言われてみれば、朝比奈くんのお陰で前に進むことができたし。


「朝比奈くんは救世主かもしれないわ···」


単純な私はいとも簡単に朝比奈くんの言葉を信じてしまう。