自分は何者なのだろう――。
 
 いつの間にか、そんな事ばかり考えるようになっていた、両親は優しくて生活にも不自由していない、いや、どちらかと言えば裕福な家庭だった。

 中学生になると自分が日本人じゃない事をはっきりと認識する事になる。在日朝鮮人である事がなるべくバレないようにコソコソと生きていく事に疑問を感じ始めたのもこの頃だ。

 通名を使うのは少しでも周囲の人間にバレないようにしているだけだが、いったい私達が何をしたのだろう、日本人に虐げられるような事を先代達はしてきたのだろうか。

 まだ幼い妹がこの現実に直面した時に耐える事が出来るか不安だった、普通に生きていくことが夢幻で有ることを悟ったのもこの時期かも知れない、しかしこの頃の不安や不満など、その後やってくる厄災に比べれば取るに足らない茶番であった事を今はまだ知らない。

普通の人間として幸せになりたい。

それだけが朴宣美の願いだった――。