「泣いてないもん!」

今の話聞いてたのかよー……。

とにかくムスッとして俺を睨みつけていた。

「そうだな、泣いてないな?」

薄く微笑みながらそう言うと
満足したのか「うん!」と首を縦に振った。

泣いたか、泣いていないか、
それは芹奈にとってとても重要な事らしかった。

「あ。嵐」

そこでようやく嵐の存在に気付いたのか芹奈が
チラリと嵐を見た。

「嵐ですよーっ」

子供をあやす勢いで話しかける嵐。
そしてそれを冷めた目で見つめる芹奈。

しばらくすると芹奈が人差し指を頬に当てた。

「あっかんべー!」

「あー!芹奈ちゃん!そんなこと言ったら
いけません!僕怒りますよ!」

「にっげろー!」

「待ちなさいー!」

「こらー、バタバタすんなよー」

嵐には生意気度100で話すから
すぐこうなる。もう……。

部屋の中でバタバタと走り回る2人を目で追う。

昨日の事は嘘のように元気になっていて
そんな様子の芹奈に自然と頬が緩んでいた。

あっかんべー、はどうかと思うが
そのくらいの方が芹奈らしくて安心するな。