海里さんが俺に託した
‪”最後の頼み‪”‬が脳裏を過ぎる。

ーー((芹奈のそばにいてやって欲しいんだ…))

ーー((俺が死んだら芹奈…
1人ぼっちになっちまう………。))

でも、同い年の男女がひとつ屋根の下、
ってのも…どうなのだろうか。

海里さんの大事な妹さんだ。

もちろん手を出す気はない。だが…

オムライス食べたかっただけなのに

と言って泣いちゃうくらいだ。

家の事も基本的に海里さん1人で
やってたっぽいし、この子を
このまま1人にして…
本当に大丈夫なのだろうか、
という不安もあった。

今日だって俺が通り掛かってなかったら
あのままあのチンピラ達にどっか
連れて行かれるとこだった。

またあんな目にあったらと思うと、
心配で心配で仕方ない。

***

嵐と別れて、俺は芹奈ちゃんをおぶったまま
夜道を進んでいた。

目的地は
海里さんと芹奈ちゃんが住んでいた家だ。

うわ…でけぇな……。

投資がどうので俺は金持ちだー、って
海里さんしょっちゅう自慢してたけど、
本当だったんだな。

目的地に着いた俺は目の前に
大きくそびえ立つ豪邸を見上げていた。

渋い字で【藤影】と彫られた表札がある。

ここに2人で…住んでたのかよ…。