それから、なんだか雪森くんと目が合うようになった。なんだか気になって見れば、雪森くんもこちらを向いている。そして、ふわふわとほほえみながら、短く口を動かす。たぶん、四文字くらいの言葉をいっている。

 目が合う場面で特に多いのが、給食のときと昼休み。目が合っては、口の動きでなにかいわれる。給食のときには、『多い?』みたいな、『おにぎり?』みたいなふうに口が動く。給食におにぎりは出ないのに。からかっているのに違いない。

 恥ずかしくなって目をそらして、それでもまだなにか感じるのでもう一度見ると、やっぱり雪森くんが見てる。そしてまた口を動かされる。『あらい(洗い? 荒い?)』みたいな、『あわい(淡い? (あわい)?)』みたいなふうに。

とにかく、からかわれているのに違いない。わたしはなにも洗っていないし、荒々しく動いているつもりもない。制服は濃い紺色で淡い色の服を着ているわけでもないし、なにかの間にはさまって給食を食べているわけでもないんだから。

 週が変わって、一緒に掃除する人が変わった。小学校のころは班のメンバーは学期ごとに変わるだけで、週では掃除をする場所が変わったけれど、今は週に一度、掃除をする場所と一緒に、班のメンバーまでもが変わる。

掃除道具を入れているロッカーの扉に何枚かの円形の表の中心を画鋲でとめてあって、一枚ずつばらばらに動かすことで班のメンバーが変わるという仕組み。

それぞれの班の担当場所は固定で、一班はどこ、二班はどこと決まったまま変わらない。

 で、その表で自分の班とそのメンバーを確認してみたところ……。

 とんでもない。

 雪森くんと秋野さんが一緒!

 ああ……なんとしても秋野さんを守らないと……!