月曜日の朝、やっぱりおみそ汁にわかめを足すべきだったかなあと反省しながら上履きに履き替えていると、「紺谷だあ」と声がしてぎくりとした。
見れば、昇降口を入ってすぐのところに、にこにこの雪森くん。
「ゆ、……きもりくん……」
「そう、雪森くん」と彼はおどけてみせる。
「ああ〜、いい朝だねえ〜」
「……天気、よくないよ……?」
「あれ、そうなの? 俺には虹が見えるよ。たしかにちょっと曇ってるけど、ほら、あそこに青空が見える。ほら、虹が見えるじゃない」
「……虹……見えないよ……?」
雪森くんはふわりと微笑むと、はあ、と息をついた。
「紺谷、きょうもかわいい」
「それ、……どういう意味なの」
「そのまんま。俺は紺谷がかわいいと思う。ものすごくね」
「嘘でしょ」
「嘘じゃないよ」
「わたし、ふとってるし」
「体型とその人がかわいいかどうかって、関係あるの?」
「すらっとしてたほうがかわいいよ」
「そうかなあ……」とあごに手をあてる雪森くん。
「ふとってる人が好きなの?」
雪森くんはわたしを見たまま、じょうずに片方の眉毛を持ちあげた。
「ん?」
「雪森くんは、こう……ふとってる人が好きなの?」
「俺は、美しい人が好きだよ。美人が好き」
「わたしは美人じゃないよ」
「いや、紺谷は美人だよ。間違いなくぶすじゃない」
ちょっと考えて、ふと浮かんだ答えっぽいものがあった。
それは、雪森くんは一部、事実とは、実際に自分が思っていることとは、反対の言葉で話しているのかもしれないというもの。
「じゃあ、雪森くんは自分のことはどう思うの? 美人かどうか」
「どうだろうなあ……。どっちでもないんじゃないかな」
ほら、やっぱり。金曜日にも自分を醜いっていってた。こんなにきれいな顔立ちで、美人じゃないはずがない。
「じゃあ、桃原さんは?」
「あれはぶすだ」
やっぱり。桃原さんはクラスでよく目立つ、とってもかわいらしい、きれいな顔立ちの人だ。
「秋野さんは?」
「あれもぶす」
「……嘘つき」
「嘘じゃない」
「なにがしたいのか、どういうつもりなのかわからないけど、それ、すごく変だよ。桃原さんも秋野さんもすごくかわいいよ。雪森くんがほんとうにふたりをかわいくないって思うなら、それは勝手だと思うけど、でも、それをわざわざ言葉にしちゃだめだよ。それも、……そんなひどい言葉に……」
かわいい、と雪森くんはつぶやいた。
「紺谷はほんとにかわいい。間違いなく美人だよ。それも、俺好みの美人」
見れば、昇降口を入ってすぐのところに、にこにこの雪森くん。
「ゆ、……きもりくん……」
「そう、雪森くん」と彼はおどけてみせる。
「ああ〜、いい朝だねえ〜」
「……天気、よくないよ……?」
「あれ、そうなの? 俺には虹が見えるよ。たしかにちょっと曇ってるけど、ほら、あそこに青空が見える。ほら、虹が見えるじゃない」
「……虹……見えないよ……?」
雪森くんはふわりと微笑むと、はあ、と息をついた。
「紺谷、きょうもかわいい」
「それ、……どういう意味なの」
「そのまんま。俺は紺谷がかわいいと思う。ものすごくね」
「嘘でしょ」
「嘘じゃないよ」
「わたし、ふとってるし」
「体型とその人がかわいいかどうかって、関係あるの?」
「すらっとしてたほうがかわいいよ」
「そうかなあ……」とあごに手をあてる雪森くん。
「ふとってる人が好きなの?」
雪森くんはわたしを見たまま、じょうずに片方の眉毛を持ちあげた。
「ん?」
「雪森くんは、こう……ふとってる人が好きなの?」
「俺は、美しい人が好きだよ。美人が好き」
「わたしは美人じゃないよ」
「いや、紺谷は美人だよ。間違いなくぶすじゃない」
ちょっと考えて、ふと浮かんだ答えっぽいものがあった。
それは、雪森くんは一部、事実とは、実際に自分が思っていることとは、反対の言葉で話しているのかもしれないというもの。
「じゃあ、雪森くんは自分のことはどう思うの? 美人かどうか」
「どうだろうなあ……。どっちでもないんじゃないかな」
ほら、やっぱり。金曜日にも自分を醜いっていってた。こんなにきれいな顔立ちで、美人じゃないはずがない。
「じゃあ、桃原さんは?」
「あれはぶすだ」
やっぱり。桃原さんはクラスでよく目立つ、とってもかわいらしい、きれいな顔立ちの人だ。
「秋野さんは?」
「あれもぶす」
「……嘘つき」
「嘘じゃない」
「なにがしたいのか、どういうつもりなのかわからないけど、それ、すごく変だよ。桃原さんも秋野さんもすごくかわいいよ。雪森くんがほんとうにふたりをかわいくないって思うなら、それは勝手だと思うけど、でも、それをわざわざ言葉にしちゃだめだよ。それも、……そんなひどい言葉に……」
かわいい、と雪森くんはつぶやいた。
「紺谷はほんとにかわいい。間違いなく美人だよ。それも、俺好みの美人」



