ぽっちゃり天使!〜美人好きの雪森くんの様子がおかしいんです…〜

 「ナサニエルはシャーロットの手をつかんだ」

 いいながら手を重ねると、莉央がぴくりと震えた。

 「そしてシャーロットを引き寄せて、花が咲き乱れる庭に、ふたりで倒れこむ」

 言葉のとおり、莉央のやわらかな手を引いて、一緒に倒れる。

 「ナサニエルはここでシャーロットにキスをするけど、あんまりおとなの真似をするもんじゃないよね」

 莉央のほっぺたはりんごみたいに赤くなっている。かわいすぎるほどかわいい。これだけで十分だ。

 「……キス、……し、ても……いいよ……?」

 俺はたまらず笑った。

 「またの機会にね」とその唇を指先で撫でる。

 「これ以上おとなの真似したら、莉央が煙噴いちゃう」

 「……っ! そ、そんなこと……!」

 ちょっと試してみたくなって、ほっぺたに唇でふれてみた。なににふれたのかもわからなくなるほどやわらかくて、熱い。

 困らせたくて、少し音を立てて唇を離す。見てみれば、ほっぺたの赤みはさらに増している。

 「キス、してもいいんでしょ?」

 「……! だっ、だ、え、……あっ……!」

 「かわいい。落ち着いて」

 莉央はほっぺたを真っ赤にしたまま、腕の中で暴れはじめた。これ以上はほんとうに怒られそうなので、おとなしく放す。

 「ん、あ、……え、あ……っ」

 「かわいいよ」

 「ちゅ、……キ、ス……」

 「唇のほうがよかった?」

 「……!」

 ぶんぶんと首を横にふられる。ここまで激しいと驚いたとか照れてるとかいうのともちょっと違うような気もしてくる。

 「ま、さか……ほ、とに……すると……思わ……かった……」

 「嫌だった?」と聞いてみると、またぶんぶんと首を横にふる。

 「びっくり、した……」

 「こっちきて」と腕を広げると、莉央はそっと寄ってきて、かわいらしくおさまる。

 「かわいい匂い嗅いでいい?」

 「……う、……ちょっと、だけ……」

 「ふふ、かわいいね、積極的。きょうは自信あるの?」

 「……ふっ……きれた……」

 「吹っ切れた? ほんと?」

 こくこくとうなずく天使にもうちょっと意地悪したくて、「お顔真っ赤だよ?」といってみる。

 「っ、いいの……! おなか、すいたら……おなか鳴る……」

 「それと同じように、俺と近づくとお顔赤くなっちゃうの?」

 「んぅ……」

 「はは、かわいい」

 天使の首のあたりに鼻を近づけて、ゆっくり息を吸いこむ。

 「あんまり嗅がないで……」

 「大丈夫、かわいいよ」

 「関係ない……!」

 「ああ……ほんとかわいい」

 ほんと天使。