「ジョナスは約束を守る男なんだ」

 ちょっと得意げに話すから、わたしは「雪森くんはジョナスが好きなの?」と聞いてみた。

 「ああいう男になりたい。ああいう、幸せで美しい男に」

 「ジョナスは見た目もいいの?」とたずねると、雪森くんはちょっと困ったような、不思議そうな顔をした。

 「……えっと、約束を守るってことはまず、畑を直してくれたの?」

 「そう。マデリンと永遠を誓ったその日にね」

 「おお」

 「ジョナスは神の前でマデリンとの永遠を誓ったその瞬間から、人生の中心に、マデリンとその家族を置いた。意識してのことじゃない、気がついたらそうなってたんだ。ジョナス自身、友達のアーネストに指摘されてはじめて気がつくくらいに」

 アーネスト……。海外の名前って、男性の名前なのか女性の名前なのか、よくわからない。

 「アーネストは男の人?」

 「そうだよ」

 「よかった」

 雪森くんは不思議そうな顔をした。

 「なんで?」

 「女の人だったら、きっとその人、ジョナスのこと好きだったはずだから」

 「……なんでそう思うの?」

 「なんか、恋愛の物語ってそういうイメージ。三角関係、みたいな」

 すごく複雑で、一筋縄ではいかないような、そんなイメージ。

 雪森くんはおもしろそうに笑った。

 「シンシア・ローズは究極のハートウォーミング・ノベリストだよ。そんなドロドロした話は書かない」

 「へえ。それなら、安心してつづきも聞けるね」

 雪森くんは小さくうなずいた。

 「ジョナスはほとんどの場面で、マデリンに従った。マデリンに危険が及びそうな場面を除いて。彼女が触るなといえばそれには触らないし、彼女がやってといえばやった。

でもジョナス、それだけの男じゃない。ジョナスはかなりユーモラスな男で、しょっちゅうマデリンの言葉を聞き間違えたりするんだよ。あと、変なところにこだわったり。くだらないけどうまいシャレをいったり。

そしてなにより、マデリンにぞっこん惚れてるんだ」

 いよいよ雪森くんの声が熱を帯びてくる。わたしはそれがなんだか嬉しくて、一言も聞き逃すまいと、一心に聞いた。