「あ、紺谷!」という雪森くんの無邪気な声で、わたしはまだ雪森くんと秋野さんしか集まっていない班に合流した。直後、「え、やば」と笑いながらやってきた河崎くんと村上くんが合流した。

 「紺谷さん、一緒に下のほうき、やろう」と秋野さんが腕を絡めてきた。「村上と河崎くんは靴箱の中の掃除やって」と指示を出す。

 「えー、雪森ひとりで雑巾?」と村上くん。

 「五人しかいないんだからしょうがないでしょ」と秋野さん。

 「ええ、怖。キレてんの?」と苦く笑う村上くんに、秋野さんは「キレてない」と短く返す。

 ふたりの会話の真ん中にいた雪森くんは、すでにバケツを持って外の水道に向かっていた。

 「雪森くんってどんな人なの?」と河崎くん。河崎くんはわたしと同じ小学校で、秋野さんや雪森くんとは、わたしと同じようについ最近はじめて会った。

 「こことここがとーってもいい人」と秋野さん。こことここ、といいながら、それぞれ自分のこめかみと左胸に指先をあてた。実際には、頭と性格がとっても悪い人、といっているのがわかりすぎるほどわかる調子で。

 「秋野とは仲が悪いんだ」と河崎くんは苦々しく笑う。

 「俺にその理由なんか聞くなよ」と村上くん。「同じ小学校だからってなんでも知ってるわけじゃないんだから」と。

 「じゃあ村上。秋野と雪森くんの仲が悪くなったきっかけ(、、、、)ってなんなの?」

 「黙れ」とぴしゃりと返す村上くんに、河崎くんは「きっつ」といって笑った。