自分の中で劇的な瞬間があっても、思った通りに現実が進むことは早々無い。
こうなればいいな、次に会ったらあの人はあんなこと言ってくるかもってシミュレーションしても、大抵は思った通りにはならない。

クラスメイトもそうで、結局二時間目まで保健室で休んでから教室に戻っても、クラスの反応はそんなに変わっていなかった。

その事実は、私の心を軽くした。

自分にとって非現実的なことを見せられても、他人の不幸を押し付けられても、一人一人の人間の心は簡単には動かない。
伝わらなかったんだって、悔しいことかもしれないけれど、それと同時に、私があれほど隠したかった秘密はみんなにとっては取るに足らない事実で、だったら私が殻を破りさえすればもっともっと近付けるんじゃないかって思えたから。

私がクラスから浮いていたことは、きっと被害妄想ではない。
挨拶すら交わせなかったことも事実だ。

それは大衆の中で生きてる人間の心理だと思う。
誰かが私に良くない感情を持っているから。
だったら自分もそうしなきゃ。
私も同じようになりたくないから。

そう思う感情を、私は否定したくない。
誰だって一人になることは怖い。
できればなるべく悲しい気持ちになんてなりたくない。

私だってその感情はあるから。

でも、クラスメイトは話を聞いてくれた。
それは事実で、初めて私の想いが届いた瞬間だった。

いや、届いたかは分からない。
完全に理解されたわけではないと思う。

それでもいい。
ここから変えていくのは私次第。

変わりたい。
もう周りのせいになんかしない。

私は自分の意志でこの地獄から抜け出してみせる。