「きっと愛されてるんだよね。分かるよ」

「何…」

「武田さん、私に言ったよね。お弁当も作ってもらえないなんて愛されてないんじゃないって。武田さんの今日のお弁当、すごく綺麗だった。あんなに綺麗なお弁当、私作ってもらったこと無い。でもね、みんながそうじゃないから…」

武田さんは俯いて、だけどまだイライラしてるってことは嫌でも伝わってくる。

「いろんな事情があると思うよ。本当は作ってあげたくてもそう出来ない事情だってあると思う。そこに愛情があるか無いかなんて関係ない。でもね、それは私の綺麗事」

「綺麗事?」

「うん。綺麗事。本当にそうだって思うよ。自分が見てる世界だけがきっと全てじゃないもん。でも、私の世界では綺麗事なの。武田さんは正しい。私の中では。だから傷付いた。怖かった。嫌だった。私が小高くんと仲良くすることで腹を立てたり悲しくなったりするのは武田さんの事情だから、二人の間に何があるのか知らないから、理解したいって思う。でも…小高くんと関係の無いことで傷付けるのはやめて欲しい…怖いの…」

「意味わかんない…」

「うん」

左腕の絆創膏。
ソレを思えば、武田さんに感情をぶつけるのも逃げずに出来る。

ちゃんと言えたと思う。

真翔が今度こそ武田さんの隣に立って、肩に触れた。

「きゃッ…」

驚いて、隣に立つ真翔を見た武田さんは泣き出しそうな目をした。