来世なんていらない

友達じゃない。
武田さんは正しい。

だからって、友達じゃなかったら嫌がらせしていいなんておかしい。

武田さんのコレは逆恨みだ。

小高くんが地味で孤独なクラスメイトをほっとけないから優しくする。
それも事実だろう。

だけど小高くんのそういう性分と武田さんの恋に巻き込まれた、私は被害者だ。

迷惑だ。

「りいさ。九条さんに謝って…」

「いらない」

「九条さん?」

「いらない!もうほっといて!」

包装を半分破いただけのおにぎりを乱暴にコンビニの袋に突っ込んで、それも更にリュックに突っ込んで、私は走った。

通り過ぎる生徒達が不思議そうに私を見送った。

「九条さん!」

背後から小高くんの声が追いかけてくる。

いい加減にして…もうやめて。
来ないで…!

「九条さんっ…待って…!」

勝てるわけない。
小高くんは足が速い。

すぐに追いつかれて手首を掴まれた。
ジャージの上からだけどけっこう強めに掴まれて、手首が痛んだ。

「イタッ…」

「ごめん…」

二人とも息を切らして、ハァハァと肩を上下させている。

痛んだ手首を咄嗟に見ようとして、上げかけたジャージの袖を、私はスッと下ろした。

小高くんは暑くなったのか、ジャージの上着を脱いだ。

上げかけた袖の下から見えてしまった素肌に、小高くんは一瞬気付いていないふりをしようとした。

「来て」

反対側の右手を小高くんが握って、歩き出した。
小高くんは何も言わなかった。

やめて。
居なくなってって思っているのに私も何も言えなかった。

少し歩いて、公園を出て、駐車場も突っ切って、小高い坂を登る。

展望台になっている丘。

四台の望遠鏡と木製のベンチ。

柵の向こう側には公園や海が見渡せて、その下には公園をグルッと囲むように遊歩道とジョギングコースがあって、木々で緑が豊かだった。

カップルなのか、男女が一組と、女性が一人。
それから私と小高くん以外は誰も居ない。