「ごめん、お待たせー」

「うん。だいじょうぶ?」

「うん!」

今度こそ真翔と並んで歩き出した。

私の左手首には真翔がくれたブレスレットとリストバンドが一緒に付いている。

アクセサリーの付け方としてはおかしいかもしれないけど、私には最強の装備だ。

「それ、いいね」

左手首をずっと眺めながらニヤニヤしている私に真翔が言った。

「うんっ。いいでしょー」

「似合ってる」

「似合ってるって、どっちが?」

「どっちって?」

「真翔のブレスレットとみんなのリストバンド」

「まつりってそんな意地悪だったっけー?」

真翔が空いてる私の右手を握ってぶんぶん振った。

「どっちを選んでも正解じゃないじゃん!」

「どうして?」

「そりゃ俺はー!まつりの一番でいたいから俺があげたのが一番だって言いたいよ?でもコレはさ、まつりが必死に立ち向かって勝ち取ったみんなの心だから」

「その答えが正解」

真翔が立ち止まった。
もうすっかり暗くなっていて、街灯も無い道では真翔の顔がうっすらとしか見えない。

「でも嫉妬はする。やっぱり…ちょっと…」

「嫉妬?真翔が、私に?」

「するよ。遂にまつりのいいとこにみんな気付き始めたかーって」

「じゃあ真翔はこれからも私が一人ぼっちで泣いてるほうが嬉しい?」

「そんなわけないだろ」

真翔がゆるく、私を抱き締めた。

真翔ってこんなにスキンシップが多い系男子だったんだ、なんて、ふと思った。

いい匂いがする。
柔軟剤かな。
真翔自身の匂いかも。

いい匂いがする、なんて引かれたら嫌だから言えないけど。

「月曜、うちに来ない?」

「えっ?」

いい匂いがするなんてのんきに思っていたら、唐突なお誘いが来て、素っ頓狂な声を出してしまった。